
「つまらない」「楽しくない」と思いながら仕事を続けていくことは、ストレスが溜まってしまうケースも少なくありません。なぜ仕事をつまらないと思うのか、要因を分析して改善を図りましょう。仕事がつまらないと感じる理由、つまらないと感じるまま仕事を続けることのデメリット、仕事がつまらないと感じた場合の対処法、自分に合った仕事の探し方などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
「仕事がつまらない・楽しくない」と感じている人の割合とは?
そもそも「仕事がつまらない・楽しくない」と感じるのは当たり前なのでしょうか。リクルートワークス研究所の調査レポートによれば(※)、「仕事とはそもそもつらいものであり、そこに楽しさを見出すことは困難だ」という質問に対し、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した人の合計は31.2%となっていました。 一方、「どちらでもない」は37.7%、「そう思わない」「どちらかといえばそう思わない」の合計は31.1%という結果に。「そう思う」「どちらかといえばそう思う」 という人の合計は全体の3割超を占めていますが、その一方で、「どちらでもない」「そう思わない」という人の合計も3割超となっているため、「仕事はつらいもの、楽しくないもの」という考え方が当たり前とは言えないことがわかります。
(※)出典:リクルートワークス研究所「ワークス1万人調査からみる仕事と暮らしの論点 「そもそも仕事はつらいもの」観を正面から考える」(2023年12月)
つまらないと感じるまま仕事を続けることのデメリット
仕事がつまらないと感じても、「収入を得る手段として割り切って続ける」という方法を取ることもできるでしょう。しかし、仕事がつまらないと感じるまま続けていくことには、デメリットもあるものです。以下で、考えられるデメリットの一例を紹介していきます。
モチベーションが維持できない
つまらないと感じる状態をそのまま受け入れ続けていると、「仕事はつまらなくて当然」と割り切るようになり、モチベーションを維持できなくなる可能性があります。新しいことにチャレンジしようとする意欲や発想も失われ、成長が止まってしまうかもしれません。結果的に、キャリアの停滞にもつながることが考えられます。
長く続けても評価・待遇が上がらない
「仕事がつまらない」と感じ、主体性や向上心を持って取り組めなくなったために、成果につなげることができず、自己肯定感が下がるケースもあるようです。また、仕事に必要なスキルがなかなか身につかず、自身の成長を感じられない場合も、同様に自己肯定感が下がりやすくなる可能性があります。
キャリアの可能性が狭まる
「仕事がつまらない」と感じながら働き続けていくことで、目標が持てず、将来目指したい姿を見失う可能性もあるでしょう。「現在の仕事で得られる経験・スキルを今後のキャリアにどのように活かすか」というビジョンを持てないまま時間を過ごすことで、キャリアの可能性が狭まってしまうケースもあります。
新たな経験をするチャンスを失っている
自身にとって面白さ・やりがいを感じられる仕事は、探せば他の場所にあるかもしれません。つまらないと思う仕事を続けて時間を過ごすことで、面白い経験をしたり、新たな知見やスキルを身に付けられたりするチャンスを失っている可能性もあるでしょう。
ストレスが溜まりやすくなる
「つまらない」「楽しくない」「やりがいがない」などと感じながら仕事を続けていくと、ストレスも溜まりやすくなるでしょう。ストレス過多の状態で働き続けるうちに、仕事そのものが苦痛になり、「もう辞めたい」と感じてしまうケースもあります。
「仕事がつまらない・楽しくない」と感じる要因
そもそも、なぜ「仕事がつまらない」と感じてしまうのでしょうか。考えられる要因の一例を紹介するので、自身の状況と照らし合わせてみてください。
労働環境が明らかに悪い
「残業が多く、労働時間が長い」「休日数が少ない」などの場合は、心身が疲弊してしまうことがあり、その結果モチベーションが低下してしまう可能性があります。「急にやる気がなくなった」と感じる場合は、忙しさや疲れによってモチベーションを保てなくなっているかもしれません。
職場の人間関係や社風が合わない
職場の人間関係が合わないことで、「仕事が楽しくない」と感じることもあるでしょう。また、社風や仕事の進め方などが自身の考え方・価値観と合わないことが要因で、「仕事がつまらない」と感じている可能性もあります。
仕事量が多い、仕事の責任が重い
仕事量が多く、ストレス過多になっている場合は「仕事が楽しくない」と感じている可能性があります。
また、仕事の責任が重くなったことにプレッシャーを感じて、「楽しかったはずの仕事が楽しくなくなった」「苦痛に感じてしまうようになった」というケースもあるでしょう。
正当に評価されていない
自身の仕事ぶりや成果が「正当に評価されていない」と感じると、モチベーションが下がってしまうでしょう。また、「成果を挙げているのに昇格や報酬に反映されない」という場合は、やりがいを見出せず、仕事に取り組むやる気そのものを失ってしまうことも考えられるでしょう。
そもそもやりたい仕事ではない
そもそも配属された部門や任された職務が「やりたいことではない」という場合は、「仕事にやりがいがない」「仕事が面白くない、楽しくない」と感じてしまうケースもあるようです。それでも自身の能力が活かされたり、感謝されたりすれば喜びを感じられることもあるかもしれませんが、そうした実感がないと、自分がその仕事をする意義を見出せないかもしれません。将来の目標やキャリアビジョンを描けず、焦りを感じることもあるでしょう。
なかなか成果が出ない
自身として努力しているつもりでも、なかなか成果が出ないと徒労感が募り、「仕事がつまらない」と思ってしまうこともあります。「今の仕事は自分には向いていない」と感じれば、自己肯定感の低下にもつながってしまうでしょう。また、向いていない仕事を続けていくこと自体に苦痛を感じて、辞めたいと思ってしまうケースも見られます。
単調すぎて飽きている
今の仕事に慣れ、ルーティン化して難なくこなせるようになると、飽きがきて単調に感じる人もいることでしょう。また、任される領域や責任の範囲が変わらない場合は、日々に刺激を感じられず、「マンネリ化している」「仕事が暇すぎる」と思うケースもあるようです。「仕事がつまらない」と感じるということは、「新しいことにチャレンジしたい」「自分をさらに成長させたい」という意欲の裏返しとも考えられます。
将来のキャリアに希望が持てない
自身が目指す姿を実現できそうなキャリアパスがない場合は、将来のキャリアに希望が持てず、仕事そのものに対するモチベーションが下がる可能性もあるでしょう。
「仕事がつまらない・楽しくない」と感じたときの対処法
「仕事がつまらない・楽しくない」と感じたときに、実践できる対処法の一例を紹介します。取り組んでみることで、仕事を前向きに捉えられるようになるかもしれません。
リフレッシュして考え方を変える
忙しくて心身が疲れていると、仕事への集中力が低下し、「つまらない」という後ろ向きの思考になりがちです。そのようなときは思い切って仕事を休む、あるいは趣味の活動に没頭するなどして、リフレッシュしてみてください。仕事と関わりがない友人・知人と会うのもいいでしょう。気持ちが切り替わることで、仕事への向き合い方が自然と変わることも考えられます。
業務を分解しやりがいを見出す
仕事をつまらないと感じていても、部分的には楽しさを感じていることもあるのではないでしょうか。例えば、営業職であれば「顧客の課題分析は面白い」「パワポ資料が見栄え良く仕上がると気分がいい」などが挙げられます。そこに自身の強みがあるはずなので、強みを活かすことを意識しながら取り組んだり、その役割を中心的に任せてもらえるように上司に働きかけたりしてもいいでしょう。
仕事の全体像を理解する
目の前の業務だけを見るのではなく、仕事の全体像に目を向けてみましょう。「会社の中でどのような役割を担い、誰の役に立っているのか」「どのような顧客に喜ばれ、社会にどう貢献しているのか」など、全体像から自分の仕事に落とし込んでみると、仕事の意義や価値を感じられることもあるでしょう。
効率化し、新しい仕事を経験する
今の担当業務は熟練していて、簡単にこなせるようになっているために物足りなさを感じているケースもあります。そうした場合、既存の業務の効率化を図り、時間を作って新しい取り組みにチャレンジしたり、未知の領域を学んでみたりすると、成長や刺激につながるかもしれません。
異動・転職する
社内を見渡して「面白そう」と思える部署への異動を願い出るのも一つの手です。異動までは難しくても、部門横断型のプロジェクトに手を挙げて参加し、他部署の人とのコミュニケーションや協働を経験してみてもいいでしょう。新たな視点・学習機会を得られる可能性があります。
社内でやりがいを見出すことが難しければ、転職を視野に入れて情報収集を行い、新たな可能性を探るという方法もあります。必ずしも転職をしなければならないわけではありません。転職活動を通じてさまざまな企業や仕事に触れるうちに、仕事に対する見方が変わることもあります。他の企業や仕事を知ることで、現職の魅力に気づく人も少なくありません。
今後の目標やキャリアプランを立てる
今後の目標やキャリアプランを立てることもおすすめです。達成したい目標や今後のキャリアについて考えてみることで、今の仕事で身に付けておきたい経験・スキルや、段階的に実現していく方法が見えやすくなるでしょう。それにより、今の仕事にも意欲的に取り組めるようになるかもしれません。
上司に相談する
仕事量が多い場合や責任が重すぎると感じている場合は、上司に相談することで仕事の割り振りや責任の範囲などについて見直してもらえる可能性もあります。また、今の業務にやりがいを持てない場合やマンネリ化を感じている場合も、悩んでいる状況や自身のやりたい仕事などについて相談してみれば、新たな業務やプロジェクトに携わるチャンスをもらえるかもしれません。職場の人間関係に悩んでいる場合は、チーム替えなどについて相談してみるのも一つの方法です。
人事担当者に相談してみる
ハラスメントがあるなど、明らかに職場の人間関係に問題がある場合は、人事担当者に相談してみるのも一案です。また、将来のキャリアが見えない場合は、社内のキャリアパスや社内公募などの制度について確認し、今後のキャリアプランの参考にすることもできるでしょう。
異業種交流会や勉強会などに参加し、社外の人と交流してみる
異業種交流会や勉強会などに参加し、社外の人と交流してさまざまな価値観に触れることは、自身の仕事について客観的に見つめ直す機会になるかもしれません。現在の仕事内容や職場について、意外な魅力や良い点を知ることができたり、より自身の価値観に合う仕事や環境を発見できたりする可能性もあります。
異動の希望を出す
社内を見渡して「面白そう」と思える部署への異動を願い出るのも一案です。異動までは難しくても、部門横断型のプロジェクトに手を挙げて参加し、他部署の人とのコミュニケーションや協働を経験してみることも有効でしょう。新たな視点・学習機会を得られる可能性があります。
転職活動を始めてみる
社内でやりがいを見出すことが難しければ、転職を視野に入れて情報収集を行い、新たな可能性を探るという方法もあります。必ずしも転職しなくてはならないわけではないので、転職の意思が固まっていない時点から転職活動を始めてみることも一案です。転職活動を通じてさまざまな企業や仕事に触れるうちに、仕事に対する見方が変わることもあるでしょう。また、他の企業や仕事を知ることで、現職の魅力に気づくケースも見られます。
「仕事がつまらない・楽しくない」と感じたとき、注意したいこと
仕事がつまらない・楽しくないと感じたとき、感情に任せて今の仕事を辞めるのではなく、冷静に状況を把握したうえで転職するのか、現職に残るのかを検討することをおすすめします。転職を目指す場合でも、「転職によって実現したいこと=転職の目的」を明確にしていなければ、転職活動で苦戦したり、希望に合わない転職先を選択したりするなど、後悔する可能性もあります。
また、仕事に対して手を抜いたりすることも避けたほうが良いでしょう。今の仕事を続けるのであれば、自身の評価を下げたり、周囲からの信頼を損ねたりして、かえって働きにくくなる可能性があります。一方、これから転職を目指す場合には、意欲的に仕事に取り組み、アピールできるような成果を挙げたほうが評価につながりやすいと言えるでしょう。
転職を目指す場合に、自分に合った仕事を探す方法
仕事がつまらない現状からの脱却を目指して転職活動を行う場合、自身の希望にマッチしている「面白い仕事」「楽しい仕事」「向いている仕事」を見つけるために役立つ方法を解説します。
キャリアの棚卸し・自己分析を行う
これまで自身が経験してきたことを振り返り、細かく書き出しましょう。その経験の中から、面白さ・楽しさ・やりがいを感じた場面を抜き出してみます。共通点を分析することで、自身がどのようなことに面白みを感じるのかを明確化しましょう。自己分析を踏まえて求人情報を見れば、自分の志向にマッチする求人が見つかりやすくなり、面接で確認すべきポイントもつかみやすくなるはずです。
仕事研究・業界分析を行う
自身が「面白い」と思える仕事は、これまで視野に入れていなかった分野にあるかもしれません。接点がなかった業界にも目を向け、業界・仕事研究を行ってみてはいかがでしょうか。培った経験・スキルを活かしつつ、新たな経験ができるポジションを発見できる可能性があります。
希望の業界・企業で働いている人などに話を聞いてみる
外から見ている業界・企業のイメージや部署、担当業務は、実際に働いてみると印象が異なるかもしれません。希望の業界や企業がある場合でも、イメージだけで応募・入社を決めるのではなく、面接やカジュアル面談を通じて実際に働いている人に話を聞き、自身に合っているかどうかを判断しましょう。
転職エージェントやスカウトサービスを活用する
転職エージェントに相談し、転職支援のプロから客観的なアドバイスを受けることもおすすめです。現在の仕事に対する悩みを率直に話してみれば、自身に合う仕事や楽しいと思える仕事の紹介を受けられるかもしれません。また、今後のキャリアについての可能性を聞いてみることで、自身では思いつかない意外な転職先や仕事が見つかることにも期待できます。
一方、スカウトサービスでは、自身の経験・スキルを求めてくれる企業や転職エージェントからスカウトメールを受けることができます。そこから楽しいと思える仕事や向いていると思える仕事などを探すこともできるでしょう。転職エージェントとスカウトサービスを併用してみるのも一案です。
粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
記事掲載日 :
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。